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回顧展に寄せて



                                                                                                                                                  ジル・ゴリチは若干 17 歳にしてパリ画壇に華々しくデビューし、その後 60 有余年、その絵筆を置くこ
                                                                                                                                                 となく創作を続けました。ヨーロッパ、アメリカ、日本を中心にその活躍の場を広げ、歳を重ねるにつれ
                                                                                                                                                 彼の絵筆は円熟味を増し、具象と抽象のはざまに独自のスタイルを確立させると共に、天性のカラリスト
                                                                                                                                                 としての魅力を発揮させました。

                                                                                                                                                  その画家が 2019 年 1 月 16 日、惜しまれつつこの世を去り、今年で3年が経ちます。ゴリチが去ってか
                                                                                                                                                 ら、世界は試練とも言える数々の大きな問題を抱え、経験したことのない変則的な日常が続いています。私
                                                                                                                                                 は、幸運にも彼が亡くなるまでの 10 年余りの間、この写実主義の画家、ジル・ゴリチのマネージャーを務
                                                                                                                                                 めてまいりました。今、もし彼が生きていたら、この世の中をどのように受け入れていたのだろうと時折想
                                                                                                                                                 像を巡らせます。自由を謳歌し、友人との語らいを何よりも大切にしたゴリチ。動物や子供を愛し、心優しく、
                                                                                                                                                 誠実な彼は現況に心を痛め、世界の人々の何か少しでも役に立ちたいと願ったことでしょう。アトリエでド
                                                                                                                                                 ビュッシーの「月の光」を聴きながら、時にはギターでスペインの旋律を奏でつつ、彼は己の使命を果たす

                                                                                                                                                 ことに全霊を傾けていたと確信します。それは、人々に希望を与える作品を描くこと、彼独自の類稀なる色
                                                                                                                                                 彩感覚を生かし決して流行にとらわれることなく、常に自分自身に忠実に制作することであったはずです。
                                                                                                                                                  日本をこよなく愛したゴリチにとって、存命中、日本での最後の個展は 2017 年秋、大阪、あべのハルカ
                                                                                                                                                 ス近鉄本店で開催されたものでした。そして再び、大阪での個展開催を心から楽しみにしていました。残
                                                                                                                                                 念ながらその願いは叶いませんでしたが、こうしてまた、皆様に作品をご覧いただく機会を与えて頂きま
                                                                                                                                                 した。この度の展覧会では、回顧展にふさわしく、未発表作品を含め晩年に到るまでの逸品を揃え、その
                                                                                                                                                 歴史を振り返ります。この機会により多くの方々にジル・ゴリチの作品をご覧いただき、そしてまた、彼
                                                                                                                                                 の作品を通して一人でも多くの方に未来への明るい希望を感じ取って頂ければと願ってやみません。最後

                                                                                                                                                 になりましたが、本展覧会開催のためにご尽力を下さいました皆様に心より御礼を申しあげます。


                                                                                                                                                                                                                      ジル・ゴリチ マネージャー
                                                                                                                                                                                                                                   片岡 ちがや
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